オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで(Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states)

文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)
平成25年度~平成29年度

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オートファジー選択的基質による細胞制御とその病態生理

代表者 小松 雅明(新潟大学・医歯学総合研究科・教授)

小松 雅明

オートファジーの障害が異常タンパク質凝集体や変性オルガネラの蓄積を伴った様々な疾病(肝細胞がんや神経変性)の発症原因となること、それら病態発症にはオートファジーによって選択的に代謝されるべき基質群(p62やNbr1等)の蓄積が関与することが明らかになってきた。このことは、ユビキチン−プロテアソーム系同様にオートファジーもその選択性を介して多様な生命現象を厳密に制御することを意味する。オートファジー選択的基質p62やNbr1はがん、代謝疾患や骨パジェット病発症に関与することが明らかになっているにもかかわらず、個体レベルにおけるそれらの選択的オートファジーの生理機能、病態生理的意義についての知見はまだ不十分である。本研究計画では、オートファジーの選択基質群ないしは選択的オートファジー関連分子の遺伝子改変マウスの網羅的解析を基軸に、1. 様々なヒト疾患で確認される凝集体形成機構、2. 選択的オートファジーの分子機構、3. 選択的オートファジーによる細胞内制御機構、そして1.から3.を統合することで4. 選択的オートファジーとヒト疾患との関連を明らかにする。さらに、オートファジー選択的基質を標的とした創薬スクリーニングを行う。

関連論文

  • Ichimura Y, Waguri S, Sou YS, Kageyama S, Hasegawa J, Ishimura R, Saito T, Yang Y, Kouno T, Fukutomi T, Hoshii T, Hirao A, Takagi K, Mizushima T, Motohashi H, Lee MS, Yoshimori T, *Tanaka K, *Yamamoto M, *Komatsu M. Phosphorylation of p62 activates the Keap1-Nrf2 pathway during selective autophagy. Mol Cell in press.
  • *Komatsu M, Kurokawa H, Waguri S, Taguchi K, Kobayashi A, Ichimura Y, Sou YS, Ueno I, Sakamoto A, Tong KI, Kim M, Nishito Y, Iemura S, Natsume T, Ueno T, Kominami E, Motohashi H, *Tanaka K, *Yamamoto M. The selective autophagy substrate p62 activates the stress responsive transcription factor Nrf2 through inactivation of Keap1. Nat Cell Biol 12: 213-223 (2010).
  • Komatsu M, Waguri S, Koike M, Sou YS, Ueno T, Hara T, Mizushima N, Iwata J, Ezaki J, Murata S, Hamazaki J, Nishito Y, Iemura S, Natsume T, Yanagawa T, Uwayama J, Warabi E, Yoshida H, Ishii T, Kobayashi A, Yamamoto M, Yue Z, Uchiyama Y, Kominami E, *Tanaka K. Homeostatic levels of p62 control cytoplasmic inclusion body formation in autophagy-deficient mice. Cell 131: 1149-1163 (2007).
  • 研究室ホームページ

分担者 和栗 聡(福島県立医科大学・医学部・教授)

和栗 聡

本研究課題では選択的オートファジーに関連する様々な遺伝子改変マウスの網羅的解析を展開する。その中で私達の研究グループでは、主に病理形態学的解析を担当する。オートファジー現象ではダイナミックな隔離膜・オートファゴソームの生成に始まり、エンドソーム‐リソソームとの融合を経て基質の分解が進む。この流れが破綻すると異常オルガネラや凝集体が細胞内に蓄積し、様々な病態を呈するが、これら機構の多くが不明なままである。オートファゴソームや凝集体の多くは数百ナノメーターから数ミクロン程度の細胞内構造であり、オートファジーの基質選択性や凝集体形成過程を示すその「現場」や「位置関係」を捉えるためには、ライブセルイメージングを含めた光学顕微鏡・電子顕微鏡レベルの形態解析が必須である。そこで本研究では、変異マウス・変異細胞株における各種オートファジーマーカー(LC3, Atg16L等)や基質・凝集体マーカー(p62, Nbr1, ubiquitin等)の局在検出法・定量法を開発し、解析に応用するとともに、オルガネラの3次元構造解析も含めた病理形態解析を推進する。本分担研究により、選択的オートファジーが関与する病態生理機能の解明と新規治療法の糸口発見に貢献する。

関連論文

  • Inami Y, Waguri S, Sakamoto A, Kouno T, Nakada K, Hino O, Watanabe S, Ando J, Iwadate M, Yamamoto M, Lee MS, Tanaka K, *Komatsu, M. Persistent activation of Nrf2 through p62 in hepatocellular carcinoma cells. J Cell Biol 193: 275-284 (2011).
  • Sou YS, Waguri S, Iwata J, Ueno T, Fujimura T, Hara T, Sawada N, Yamada A, Mizushima N, Uchiyama Y, Kominami E, Tanaka K, *Komatsu M. The Atg8 conjugation system is indispensable for proper development of autophagic isolation membranes in mice. Mol Biol Cell 19: 47624775 (2008).
  • Komatsu M, Waguri S, Chiba T, Murata S, Iwata J, Tanida I, Ueno T, Koike M, Uchiyama Y, Kominami E, *Tanaka K. Loss of autophagy in the central nervous system causes neurodegeneration in mice. Nature 441: 880-884 (2006).